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「さっきアンタが言っただろう。移住すりゃあ、いいってよぉ。そういうアテがあって、言ったんじゃあねぇのか」
期待を放つ蕪雑の顔をながめつつ、烏有は杯に口をつけた。
「不思議だな」
「何がだ」
「いやいや山賊をしている、というところがだよ。この山を通る荷駄を襲って、いろいろなものを手に入れるほうが、楽だと思ったりはしないのかい」
「しねぇよ。誰かがあくせく働いて手に入れたモンを、ちょろまかして威張るなんざ、格好悪いじゃねぇか」
「クッ……」
烏有が口元に手を当てる。クックと喉を鳴らす烏有の姿に、蕪雑はてれくさそうに頭を掻いた。
「まあ、その……なんだ。できるなら、山賊から足を洗いてぇのよ。けど、どうすりゃいいのか、さっぱりわからねぇんだ。わけのわかんねぇうちに頭目になっちまったから、どっかで落ち着けるまでは、俺はあいつらの面倒を見なきゃならねぇだろう」
「はじめから、蕪雑が首魁と決まっていたわけじゃないのかい」
「違ぇよ。なんかしんねぇけど、いつの間にか俺が兄貴分になってたんだ。たぶん、ここに一番、長く住んでいるからじゃねぇかな」
「いったい、どういう集まりなのか、教えてもらえるかな」
烏有の問いに、蕪雑は首をかしげた。
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