第一章 決起1

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「さっきアンタが言っただろう。移住すりゃあ、いいってよぉ。そういうアテがあって、言ったんじゃあねぇのか」  期待を放つ蕪雑の顔をながめつつ、烏有は杯に口をつけた。 「不思議だな」 「何がだ」 「いやいや山賊をしている、というところがだよ。この山を通る荷駄を襲って、いろいろなものを手に入れるほうが、楽だと思ったりはしないのかい」 「しねぇよ。誰かがあくせく働いて手に入れたモンを、ちょろまかして威張るなんざ、格好悪いじゃねぇか」 「クッ……」  烏有が口元に手を当てる。クックと喉を鳴らす烏有の姿に、蕪雑はてれくさそうに頭を掻いた。 「まあ、その……なんだ。できるなら、山賊から足を洗いてぇのよ。けど、どうすりゃいいのか、さっぱりわからねぇんだ。わけのわかんねぇうちに頭目になっちまったから、どっかで落ち着けるまでは、俺はあいつらの面倒を見なきゃならねぇだろう」 「はじめから、蕪雑が首魁と決まっていたわけじゃないのかい」 「違ぇよ。なんかしんねぇけど、いつの間にか俺が兄貴分になってたんだ。たぶん、ここに一番、長く住んでいるからじゃねぇかな」 「いったい、どういう集まりなのか、教えてもらえるかな」  烏有の問いに、蕪雑は首をかしげた。     
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