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「どういうって。俺はそこの府、甲柄の隅っこで、貧乏やってるガキどもと、日銭働きをしていたんだよ」
「それがどうして、府の外で山賊をすることになったんだい」
「商売人が山越えをするってんで、その護衛に雇われたんだよ。そんで襲われて、無我夢中で戦っていたら、雇い主は荷物を置いて逃げちまうし、気づいたら襲ってきた連中は全滅してるしで、そっからどうすりゃいいか、わかんなくなっちまった」
興味深そうに、烏有はわずかに前にのめって、杯をかたむけた。
「しばらく待ってみたんだが、雇い主は帰ってこねぇ。どうしようかって悩んでいたら、府に引きかえそうって言った奴がいてな。そうするしかねぇかって戻ったら、そいつがいきなり、俺に縄をかけて山賊の仲間をつかまえたとか、ほざきやがった。ちょっと調べりゃあ、そうじゃねぇってわかっただろうに、俺ぁそのまま牢にぶち込まれたんだよ。アイツぁ、よっぽど報奨金が欲しかったんだろうなぁ」
「それは、災難だったね」
「まあ、俺がそんなことをする奴じゃねぇってのを、知っている奴等が牢破りの手伝いをしてくれてさ。けど、そんなことをすりゃあ、ただじゃすまねぇ。そんで、ひとまず山に隠れておこうってなったんだが……」
やれやれとため息を吐いて、蕪雑は心底から不本意だと声音に乗せて言った。
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