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「そうすりゃあ、年のいった連中も安心だろう。まったく、かわいそうな連中ばっかなんだぜ? ちょっとばかし無礼を働いたとかなんかで、簡単に牢にぶちこまれて辛い目に遭わされてよぉ。領主や豪族なんかは、俺たちを家畜みてぇに考えてやがんだ」
「そう思うのなら、ほかの土地に行ってもおなじとは、考えないのか」
「豪族とか領主とかの考えひとつで、法は決まるんだろう? そんなら、甲柄よりも人を大切に扱う府が、あるかもしれねぇじゃねぇか。……もしかして、烏有の見てきた府はどれも、工夫や農夫なんかを、家畜みてぇに扱ってんのか?」
蕪雑が眉をひそめる。烏有はゆるくかぶりを振った。
「生産者がいなければ、品物はできないからね。重要だと考えている府も、あるにはあったよ」
「そんなら、その府を教えてくれよ。そこに移住すりゃあ、わけのわかんねえ罪状を突きつけられる心配もなくなるだろ」
子どものように目を輝かせる蕪雑を、烏有はじっと見た。
「……なんだよ」
「蕪雑。府を造らないか」
「は?」
「君の望む府を探すより、造るほうが確実だろう」
蕪雑は目をしばたたかせ、炎にあぶられ輝く烏有の白い顔を見た。
「正気で言ってんのか」
「もちろんだ」
ふたりはしばし見つめ合うと、互いに顔を寄せて、声を低めた。
「府なんて、どこに、どうやって造るんだよ。府は、この国を治める申皇が定めて、領主と決めた者を据えてできるもんだろう?」
「申皇に許しを乞えばいい」
「どうやって」
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