1.始まりと終わり

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その波はどんどん広がり、 田崎さんの周囲の女子達も 彼女を非難するようになって。 悪意に満ちた視線に耐えられなくなった 田崎さんは、あっという間に音を上げる。 そう、芳の真剣交際は たった1カ月で終わってしまったのだ。 卒業式の翌日、 田崎さんは私に謝罪した。 そんなことをされる方がミジメなのだが、 どうせ二度と会うことも無いと思い、 適当に話を聞き流していると、 最後に彼女はこう言ったのである。 「私、雅さんと一緒にいる 井崎先輩が好きだったんですよ。 楽しそうで幸せそうで、 ああ、いいなあ…って。 雅さんが本当に羨ましかった。 でもね、私といた井崎先輩は まるで別人だった。 なんだか自分を大きく見せようとして、 すごく無理している感じで。 一緒にいればいるほど、 気持ちが冷めていったんです。 ほんと私って、嫌な女ですよね」 そんな話を聞かされたというのに、 なぜか無性に芳に会いたくなった。 『可哀想に』って慰めて、 それから他愛も無い話をして、 バカみたいに大笑いしたい。 …ねえ、芳。 アナタは 恋が苦しいものだと言ったよね? でも、私の恋は 優しくて穏やかなものだったみたい。 このとき私は初めて、 芳への恋心を自覚した。
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