2.それから

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…そして私の前から去っていく。    何の約束もせず、  別れさえも告げずに。 不思議と恨む気にはなれなかった。 優しい人だったから、 私を傷つけられなかったのだろう。 だから私の方から留守電に 『さようなら』とだけメッセージを残し、 心機一転、すべて変えた。 電話番号もSNSもメアドも全部全部。 芳の時みたいに掛かって来ない電話を ずっと待つのがイヤだったからだ。 さすがに二度目の失恋は、回復が早く。 そのうち就職活動に熱中し、 いつしか彼のことを 考えることも無くなった。 就職先は付き合っていた頃に 光正が話してくれた会社だ。 ウチの地元出身の人が社長をしていて、 とても素晴らしい社風なのだと。 >そこ、世襲制だったんだけど、 >あまりにもその人が有能すぎて >外部の人間を社長にすることを >周囲も認めざるを得なかったらしい。 これも縁かな、と思う。 芳に会わなければ、 光正と付き合うことも無く。 光正に会ったから、 この会社で働くことを決めたのだから。 …そして入社式で私は、 意外な人物と再会を果たすのだ。
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