1.始まりと終わり

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1.始まりと終わり

人は誰でも二面性を持っている。 …私だってそうだ。 明るく元気な高橋雅(みやび)と、 少し屈折している高橋雅を使い分け、 巧みに周囲を騙して生きてきた。 人と同じであることを自分に課し、 そのクセ、人とは違う自分を探し続ける。 こんな大ゲサなことを言っているが、 実際にしていることは 傍から見れば大したことでは無いだろう。 例えば音楽。 例えば映画。 例えば小説。 万人受けするものを好きだと言いながら、 実はマニアックなものばかりに手を出し。 自分は他者とは異なるのだと、 心の中でほくそ笑む。 そんな厭らしい性格の私が ある日偶然、その曲に出合った。 なんとなく自宅でラジオを聴いていて、 思わずその曲に吸い寄せられたのだ。 曲の最後に女性パーソナリティが よく通る声でタイトルを言い。 慌てて音楽配信サイトで検索したが、 古い曲のせいか見つからず。 あちこち中古CDを探して ようやく入手したのである。 そんな戦利品を見せびらかしたいのは 当然の心理なワケで。 でも『変わった趣味』と言われるのも 怖いという矛盾と闘った挙句、 その曲をたまに口ずさむという程度で 満足することにした。
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