1.始まりと終わり

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それは高3の秋。 相手は1つ年下で、 バスケ部のマネージャーをしている 田崎 真由佳という女のコだった。 私達が付き合っているのは 周知の事実だったが、 バスケ部が県予選で早々に敗れ、 芳が10月末で退部すると言い出し。 それを聞いた田崎さんが、 瞳を潤ませ告白して来たそうだ。 彼女はとにかく可愛いと評判で。 他校の生徒が待ち伏せするほどの容姿に、 庇護本能をくすぐる舌足らずな喋り方、 その大きな胸に大半の男子が メロメロになっており。 だからまさかその田崎さんが、 ずっと芳を好きだったとは 誰も思わなかったのだ。 後に彼女はこう語っている。 私から芳を奪おうとしたのでは無く、 もう会えなくなるので“記念”に 想いを伝えておきたかっただけなのだと。 ところが芳はいとも簡単に、 彼女の方を選んでしまったのである。 「なんか上手く言えないんだけどさ。 人を好きになるのって、 もっとこう胸を締め付けられるような、 すごく苦しいものなんじゃないのか? …俺、雅といてもそうならないんだよ。 一緒にいると楽しいし、 優しい気持ちになるけど、 それは多分、恋じゃない。 ごめん、雅。 俺は恋をしてみたいんだ」
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