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2.それから
大学進学のため上京し、
環境が変わったことにより
失恋の痛みも幾らか和らいだ。
交際当時に進路を決めたので、
芳もすぐ近くの大学に通っていたが、
さすが大都会。
まったく会うことも無く。
それでも失恋というのは
本当に厄介なもので。
あれほどハッキリ振られたというのに、
まだ期待している自分がいて。
>もしかして『やり直そう』と
>芳から連絡が来るかもしれない。
>『やっぱり雅じゃなきゃダメだ』と
>謝ってきたら許してあげよう。
…その時のために、
誰とも付き合わなかった。
芳以上に気の合う相手はいない。
絶対に芳もそう思っているに違いない。
そう信じて疑わず、
アッという間に1年が終わる。
「やだ、もう。芳くんが寝坊するから!
この映画、すっごく見たかったのに~」
哀しいほどの条件反射で、
“芳”という名前に反応してしまい。
その声の主を見て激しく後悔した。
街なかの映画館。
仲良さげなカップルが腕を組んでいて。
お洒落で可愛らしい彼女が、
彼氏に向かって拗ねている。
「あ、…芳」
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