真夜中のチョコ

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
美千恵は最近出逢ったチョコ好き幕末オタクのカレシに可愛いラッピングのナッツ入りビターチョコを贈るとラインしたら、ホワイトデーは海外出張で日本には居ないから今夜二人で過ごそうと返信が届き、ワクワクしながら着替え持参でカレシのマンションへとまだ寒い中腕まくりしながらダッシュしてしまい、インターホンの前で呼吸を整え、気合を入れてカレシの部屋のドアを蹴破る勢いで、まるで獲物に飛びかかるキミはライオンかとも言わせずにカレシの唇が変形しそうな吸引力で、キミは掃除機かとも言わせずにシングルベッドに二人倒れ込んでいた。気が付いたら全てが終わっていて、空腹感だけが漂い、初めてカレシが「ステーキ焼くわ。」と言葉を発した。フライパンで焼きながら、「キミはまるでケダモノだね。」と幕末男子はボソボソ呟いていたのを「エーッ、ケニアに出張なんだ。」と勝手に解釈していて、換気扇とジュージュー焼ける音が幸いした。肉でも食べなきゃやってけないと、二人で乾杯して、順番が逆でも、もう一回ベッドインすりゃ同じ事だとしか感じていない美千恵と、坂本龍馬を熱く語り始め、この男って、もしかして生れ変りなんだろうかと、少々ヘキヘキし始めたが、また始まったよでもあった。満腹になり、デザートのアイスを食べ終わり、急に睡魔に襲われて再び彼のベッドに今度は一人で倒れ込んでしまっていた。真夜中にボリボリという音を感じて目覚め、トイレに等身大の龍馬写真が飾ってあり、フーンと入る度に思っていたが、薄暗いリビングのソファーに腰掛けてカレシがプレゼントしたチョコを食べているんだと、夜中にスイーツは胃に良くないわよと言おうとして寝ぼけ眼を擦りながら、近づいたらあのトイレのあの姿の龍馬に変装したカレシを見て、いや違う彼じゃない。呆然としながら、美千恵は私は夢の中に居るのだろうか、摩訶不思議な雰囲気漂う中、顔はやはりカレシではなかった。あの龍馬そのものだった。美千恵は何を思ったのか、その男に泣きながら抱きついて、「龍馬さーん、あなた教科書から消えちゃうのよ。どうするの。」と叫びながらギャンギャン泣きじゃくり、それは夕食時にカレシが消えてはならぬと言ったからだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!