普通の生活

あらすじ

主人公が目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。
何故そこで倒れていたのかも分からない主人公だが、なにかを「しなければいけない」という強い思いに突き動かされ階段を下りると道行く人から悲鳴が上がる。
主人公は頭部から出血し全身血塗れの状態だったのだ。
「しなければいけない」事の為に治療を固辞する主人公だが救急車で搬送される。
そこで、主人公は屋外階段で転落し負傷しそれが原因で記憶喪失になってしまった事が明らかになった。

まるで主人公に怯えているような様子の「妻」だという女性。
全く姿を見せない「娘」のはずの女性。
記憶を失う前の自分の家庭への態度や自らの振る舞い・仕事や会社に対する姿勢に疑問や不快感を感じた主人公は、記憶を失った今の自分にとって「普通」な態度や対応をし始める。
そんな主人公に周囲は戸惑うが、次第に影響され周囲にとっての「普通」も変化していった。
記憶を失った自分にとって心地よい「普通」に囲まれ、穏やかで幸せな生活を送り始める主人公。
そんな時に彼は記憶の大部分を取り戻す出来事に遭遇する。
以前の自分の「普通」とその生活での心地よさや快感を思い出し、「戻りたい」という衝動が主人公に生まれ、それを良しとする人間や環境にも揺さぶられる主人公。
彼は苦悩し葛藤の上で戻らない事を選択する。
そして以前の自分と決別した主人公は遂に失っていた最期の記憶である事故直前の記憶を取り戻し、転落事件の加害者で「以前の自分の普通が生み出した、自らが決別しても無かった事には出来ない存在」である娘と向き合うことになる。