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逃げなきゃ!
それが私、赤倉琴子(あかくらことこ)が真っ先に考えた事だった。ここ最近不運が続くと思っていた。
鞄の紐が切れたり、入れたハズのプリントを忘れたたり、誰もいないハズの窓から、物が落ちてきてあわや大けがをするところだった事もあった。
しかし、今回のそれは規模が違う。
学校の誰かに呼び出された手紙で浜に行くと、待ち合わせの時間になっても誰もこない。イタズラだと思ったその時、私は恐ろしい物を見た。
それは初老の男性だろうか?
目は虚ろ、そして言葉にならないうめき声とも雄叫びともとれるような声なのか、音を発している。
麻薬? 危険ドラッグ?
そして獣臭のような、いやこれは腐乱臭だろうか? そんな吐き気を伴う空気の中でそれは私を見つめ、そして狙いを定めたのだ。
向かってくる。正常な人間の動きではない、身体が紐で引っ張られているような引きずられているような物理法則を無視した動きで。
「ひっ……」
私は走った。
追いつかれる事はない……されど男との距離は変わらない。私必至で走った。普段そこまで運動をしている方ではない私の呼吸は乱れ、躓いた。
痛みを我慢してすぐに立ち上がると近づいてしまった男との距離を再び離す為に走り出す。
(ダメだ……もう走れない)
怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
この男は、私を犯すわけでも、殺すつもりもない。
私は確信していた。
この男は、私を食べようとしている。
誰もいないと思っていた浜辺にある階段に腰かけて少年? 少女どっちともとれないがハンバーガーを呑気に齧ってこちらを見つめている。
助けを求めなきゃ!
これが、私が御剣絶乃との初めての出会いとなり、これから彼? それとも彼女と私達が普段生活しているしている世界とは違った歪んだ世界へ身体と心を置き忘れてしまったお話なのだ。
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