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とぷとぷとティーポットから注がれていく琥珀色の液体。それと同時に、ガラスのティーポットの中で茶葉が揺れて踊るのが見える。ふわりといい香りがそれと同時に部屋に広がっていく。ティーバックなどのものとは違う香り。
なるほど、やはり茶葉は違うのか、と普段茶葉で紅茶を淹れることもそういう店に入ることもない高砂は、興味深くそれを見ていた。茶葉の種類も聞いてはみたが、聞いたこともない種類で、まるで呪文か何かのように聞こえた。
とろとろとしたティータイム、家を出たときにはそんなはずがないのに紅茶の香りがまとわりついて香っているような気がした。
ぱたぱたと、雨の落ちる音。雨の日はスーツが濡れて面倒くさいんだよなぁ、と思いながら傘を差す。特に外での仕事の時は雨というのはとても面倒くさいものだった。レストランや喫茶店に入って出来る仕事の時ならいいが、どうしても外にいなくてはならない仕事もある。そうなると傘を差してもびしょびしょになり、徐々に体温が奪われていくのを如実に感じながら仕事を続けていくのは純粋に苦痛だった。
そして、今日はそういう仕事の日だ。溜息を吐きながらも、仕事をしないわけにもいかない。働かざるもの食うべからずどころか、明日の生活も怪しいような生活なのだ。貧乏暇なし。
「……あのう」
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