湖面の陽を掬う

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「人の幸せを奪ってまで幸せになる価値が貴方にあるの!?」  幸せになる価値。そんなものはきっとないんだろう。けれど、大地が幸せになっていいと言う、それだけで高砂が幸せになる理由が出来た。そっと目を伏せる。いつのまにか握り締められていた手が震えていた。 「……私、貴方と大地さんの時間を奪ったつもりもありません。それに……私も幸せになっていいって、大地さんが言ってくれたので」  大地は、傍に寄ってくる人間を邪険になどしない。いつだって精一杯で応える。だから、高砂の存在が彼女の邪魔になるはずなんて、有り得ない。彼女の被害妄想なのだ。 「あの人は誰にでも優しいから、貴方勘違いしているのよっ!」 勘違いなんてしていない。誰にでも優しい人だと知っている。それでもその手で彼は高砂を抱きしめ、微笑み、優しい言葉で愛を紡いでくれるから。 だから、彼の傍にいるのにふさわしくないとわかっているのに、それを許してくれてしまうから、こうして離れられずにいる。 「……仕事があるんで、これで」 ぺこりと頭を下げて高砂は足早に立ち去ろうとする。その背中に、彼女の少しヒステリックな声が浴びせられた。 「忠告しましたからね!」     
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