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しかし、高砂が行動を起こすよりも、相手が行動を起こす方がよほど早かった。それは大地が来た翌日のことだった。夕方仕事が終わり家に帰ると、家の前に彼女がいた。
「……貴方は」
「あ、やっと帰って来たの」
目元がまったく笑っていない彼女のほの暗い笑みに、ぞくぞくとする。
「待ってたの」
「……私はお会いしたくなかったですねえ」
「だって、貴方忠告を一切聞かないんですもん」
ねぇ、と首を傾げる姿は子どもっぽくも女らしくもある。けれど彼女はそんなに可愛らしいものではない。
「ねえ、貴方が大地をどんな風に思っていてもいいの。でも、あの人は私のもの。わかる?」
彼女の表情がすぅっと消えた。
「なんであの人にくっつくの? なんであの人に抱きしめられるの? 貴方、男でしょう? ねぇ、気持ちが悪いのよ」
ヒステリックにまくし立てる甲高い声。耳を抑えたいのをこらえ、引きつった顔で答える。
「貴女のそういうところの方がよっぽどどうかと思いますけどねえ。いきなり人の家までやってきて、異常だとは思わないんですか」
「異常なのはどっちよ! いいから二度とあの人の前に顔を出さないで!」
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