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グッと全身が重たくなる。そうだ、しんどい、辛いとか苦しいとか、全部ひっくるめてしんどい、という感覚が高砂を襲った。ぐらり、と視界が揺らいだ気がした。
「はい、素直ないい子」
頭を子どものように撫でられ、突っ張っていた気持ちをパツン、と切られた様な感覚に陥る。不愉快、そう思わなければならないだろうに、なぜか彼の言葉はするすると身の内に入り込み、一番張り詰めている糸を切り落としてしまう。まるで、魔法だ。高砂はふらつきそうな足をなんとか踏みしめ、そっとその手のひらを押しのけた。
「大地さん、子どもじゃないんですから」
思わずきつい口調になってしまい、ハッとする。けれど大地はからからと笑うだけで、特に気にした風ではなかった。
「ごめん、弟がいるからつい同じ感覚で」
「私と似てるんですか?」
そう尋ねると大地はあっけらかんと似ていない、と答えた。「うちの弟は小柄で飄々としててドライで、そんでもって、可愛い。俺、ブラコンなの」
にこにこと笑う横顔は心底楽しそうで、そんな風に可愛がってくれる家族のいる見ず知らずの弟が羨ましくなった。彼の弟も彼と同じように少し茶色がかった癖毛なのだろうか。キラキラとした瞳なのだろうか。そんなことをぼんやりと思う。突然、大地が何か思いついたかのように目を輝かせながら高砂を見た。
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