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口元を拭って視線を向ければ、弟はそれを眉を寄せて見つめていた。
「いたい」
あの、温かい手で撫でてほしい。抱きしめてほしい。今すぐ、助けてほしい。
「痛い……苦しい……」
魔法使いみたいに、助けて。
「……痛くて当然だろう」
ぽつりと目の前の彼は呟いた。
「生きてるんだから、痛くて当たり前だろう。あんたがどれだけ見て見ぬふりしてきたんだか知らないけど、ずっとあんたは痛くてたまらなかったんだよ」
そうだ、ずっと、ずっと。
「ずっと、痛かった……」
バタバタと涙が落ちていく。
「ふ、う、ぇっ……うぅっ……」
痛い。苦しい。辛い。感じたら、生きていけなかった。それを全部なくしてくれる魔法使いの、魔法は溶けた。こぼれ落ちる涙とともに、全ての魔法が解けて消えていく気がした。
「知ってた、知ってました、だって、私は」
誰からも、愛されない。誰も生きることを認めない。価値なんてない。そんな自分を理解してしまえばもう生きていけない。ならそんな痛み全部忘れてしまえば。ぎゅうっと、胃が引き攣れたように痛む。体を丸めて、痛みをこらえる。激痛に、意識が遠のいた。
目を覚ますと、そこは白い部屋だった。体を起こそうとすると、左腕に激痛が走る。
「痛っ……ここ、どこ……」
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