湖面の陽を掬う

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「おかあさん」 いつの間にか自分は小さな子どもに返っていて、高砂自身は夢だと分かっているにも関わらず、その小さな手を彼女に伸ばす。その手はしっかりと彼女の手に握られ、それが嬉しくて小さな手で必死に握り返す。 「今日はハンバーグにしよっか」 「ほんと!?」 かすみ、好きだもんね。そうやって微笑む彼女の横顔を見つめ、こくこくと頷く。大人になった今なら、大好きだった彼女の手作りハンバーグがほとんど豆腐で出来上がっていた節約料理だったことがわかる。あんなに一杯お肉が食べられるなんて、とは、当時の自分は随分無邪気にはしゃいでいたものだ。いや、当時の質素な食卓を思えば仕方のないことなのかもしれない。どれだけ混ぜものがしてあっても、牛肉が食べられる数少ない機会だった。 普通ならもっと美味しいものが食べたい、とか、肉が食べたい、と言ったのかもしれない。けれど子どもながらに苦労している母がどうにかこうにかやりくりして自分に食べさせようとしてくれていることは分かっていたのだろう。そんな母のことが、ただ純粋に好きだった。 『かすみ、愛してるよ』     
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