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母親の優しい声に、甘い男の声が重なった。緩やかに、意識が浮上していく。重たい瞼をあげる。自分を見下ろす人の顔。ぼんやりとしていた焦点が徐々にはっきりとして像を結んでいく。そこにあるのは、見知った男の顔。
「起きた?」
「……だいち、さん?」
「よく寝てたね」
お疲れ様、と頭を撫でられる。ほんの数歳しか変わらないというのに、本当に子ども扱い。よくよく確認すると、枕にしていたのは大地の膝のようだ。まあ、気持ちがいいからなんでもいいか、と高砂はその手のひらに頭を摺り寄せた。あんな夢を見たあとだからというのもあり、今はいつも以上に人肌が恋しく感じられた。
「案外甘えただよね」
「……ぎゅってしても、いいですか」
「どうぞ」
その体に、ぎゅうと抱きつく。かなり腰が細いと思っていたが、いざ抱きついてみると案外がっちりしているし、体幹にしっかりと筋肉がついており、力を込めても揺らがず、折れてしまいそうな不安さもない。そうしていると、人の柔らかさとぽかぽかとしたぬくもりにとろとろとまた眠気が襲ってくる。
くすり、と笑ったのが体の動きで分かった。まるで膝の上で眠る猫か何かを撫でているかのように、大地は高砂の背中を撫でる。
「もう少し寝る?」
「ん……」
ぎゅっとしたままぐずるようにその腹に頭を擦り付ける。
「おやすみ、少ししたら起こしてあげるね」
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