いつまでも君と

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   その言葉に納得した。なんとなく、私はお婆さんに引き寄せられたような感覚があったのだ。  そんなことを考えていると、お婆さんは水晶玉に両手をかざし、念でも送っているかのようにじっと固まった。  気のせいだろうか。水晶玉がほんのりと光り出したように見える。 「見てみるかい? あんたの将来」  ……まさか、未来が見えるっていうの?  そう言おうとしたが、聞くのはなんだか野暮な気もした。小さく頷く。お婆さんはにやりと笑うと、水晶玉を指差した。 「覗いてごらん。これは、来月のホワイトデーだよ」  私は水晶玉を覗く。その瞬間、私が座っていたパイプ椅子が消え、すとんと地面が抜け落ちる感覚がした。視界は暗転し、私はどこか見知らぬ空中に放り出された。  闇の底、宇宙の端。そんなイメージの、何も無い空間が目の前に広がっている。天も地も無く、体はゆらゆらと漂っていた。平衡感覚を失いつつもなんとか状態を立て直すと、視界の先に映像が見えた。  泳ぐようにそこへ近付く。その映像の中で、私はあくせく働いていた。  保険会社の広告ハガキの仕分け作業だ。大量のハガキを住所別に分けてカゴに入れていく。周りには、一心不乱に同じ作業を繰り返している人たちがたくさんいる。  闇の中、どこからかお婆さんの声が聞こえてきた。 「正社員で働いているのに、男のために土日もバイトを入れるなんて偉いもんだね。でもあまり無理をすると、体を壊すよ。……そら、次は十ヶ月後の大晦日だ」  お婆さんがそう言うと、前方の映像が切り替わる。私は暗闇を漂ったまま、それを見つめた。  そこには、スーパーで買い物をする私の姿があった。  
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