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元旦を明日に控え、私はお節料理が並ぶコーナーを見つめている。伊達巻に黒豆、数の子に昆布巻き。自分で作れるものもあるが、どちらにしても値段が高い。私はしばらくそれらを見つめると、やがて諦めたようにそこを離れ、変わりにカット餅とごぼうや人参を買った。毎年恒例のお雑煮だ。
「……」
「年初めのお祝い行事にも、贅沢はできない。切ないもんだね。次はさらに飛んで、十年後だ」
また映像が切り替わる。目の前に現れたのは、ほうれい線が濃くなり、髪の艶がやや褪せた自分の姿だった。
三十九歳。今でも働いている業務用廃棄物処理会社で、私は変わらずパソコンを叩いている。いつものように少しだけ残業をして、お先に失礼します、と言って席を立つ。帰りにはいつものスーパーに寄り、安い肉と野菜を買う。
分量は、およそ二人分。おそらく子供はいない。
私はそっと目を閉じた。
お婆さんの声がする。
「男の夢は生涯叶わず、あんたは彼のためにずっと働き通しだよ。あんたの顔は美しいから、二十九の今なら十分買い手はある。実際、今、気に入られている会社の男もいるだろう? 他の男と一緒になった方がお前は幸せになるよ」
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