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(一緒に過ごすお正月は今年で二年目か。結婚してから、ますます月日の流れが早いなぁ)
難しい表情をありありと浮かべながら、隣で新聞を読む横顔を窺った。膝の上には愛猫の八朔がいて、日本語が読めないはずなのに同じような顔で紙面を眺める姿が目に留まる。微笑ましいその様子に、自然と笑みが零れた。
市内にある物流関係の会社に勤める私、鎌田ひとみ。旦那さまは会社でカマキリと恐れられている上司だったりする。
入社当初は出来の悪い私を、教育係として厳しくしっ責した。だけどそれは成長を望んでいるからだと知ってからは、どんなに叱られても頑張ることができた。恋愛感情が絡んだからこそ、ここぞとばかりに努力することができたのは、同じように愛してくれた旦那さまのお蔭なんだよね。
「ひとみ、読み終えたんですか?」
正仁さんは新聞を手早く折り畳んでから、レディースコミック誌を膝に置いている私に話しかけてきた。
「はい。お正月は特番ばかりでテレビを見るのも飽きちゃうし、暇ですよね」
「俺としては熱心に卑猥な雑誌を読んでる君の顔を眺めるだけで、自動的に暇が潰せます」
片側の口角を上げて微笑んだ正仁さんが音もなく顔を寄せるなり、頬にそっとキスをした。あえて唇を避けるイジワルなところが彼らしい。そこのところを突っ込めと、話題をわざわざ提供しているのかもしれないな。
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