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言ってる意味が分からなくて小首を傾げた私を、正仁さんは意味深な流し目で見つめた。
「正月早々真昼間から、旦那の隣で堂々と卑猥な雑誌を読みふける君のお願い事は、間違いなくソッチ系のことでしょう。そんなリクエストに応えるのは、大変だろうなぁと思ったんです」
「ひどい! 私、そんなことを頼んだりしませんからね。正仁さんこそ、変なお願いをする気なんじゃないですか?」
イラっとしたので、繋いでいた手を振り解いた。暇つぶしに雑誌を読んでいただけだったのに、こんな風にとられるなんて思いもしなかった。
「まさか。俺の願いは至って普通です。ひとみが考えるような、卑猥なものじゃありませんよ」
せせら笑いながら見下ろしてくる正仁さんの顔が、本当に憎たらしい!
「ひとみの怒りが収まりそうもないので、別々に行動しましょうか。ちょうど目印になりそうなファーストフード店もあることですし、30分後ここに集合ということでよろしく」
言うなり駆け出して行った正仁さんの後ろ姿を、ぼんやりと見送った。さっきまで繋いでいた手の温もりが瞬く間になくなっていくのが寂しくて、ぎゅっと掌を握りしめる。
唐突に提案された勝負といい今の話といい、さっきからずっと正仁さんのペースに乗せられっぱなしで、反論する暇を与えない彼の采配になすすべがなかったのだった。
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