深夜の事務所でコーヒーを

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「三条さんがおれをご指名かい?」 「そんなわけないでしょ。部長さんが先野さんを指名したの」  通常ならマネージャーが各探偵の案件状況からサブに入る人員を選ぶのだが、今回は部長が指名とはどういうことやら。 「そいつは名誉なことで」 「忙しいのでしたら、ほかをあたりますが」 「三条さんのサブなら断れないぜ」  三条愛美(さんじょうまなみ)は先野より一回りほど若いが、いくつもの案件を常に抱えていて、本人は謙遜するが、敏腕探偵候補として将来有望な社員である。 「ありがと。じゃ、明日、よろしくね」  引き受けてくれたことにマネージャーは礼を言って去っていく。  先野はしかし、いまメインで受けている案件もそう簡単ではないし、どうしたものかな、と考えた。 「だが、まぁ、なんとかなるか」  部長がわざわざ指名したのだ。ならばなんとしてでもやり遂げるしかないし、やり遂げる見込みがあるからこそ指名してきたのだろう。 「案外、楽かもしれんな……」  そんなことを思った。楽観的に考える男であった。
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