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「三条さんがおれをご指名かい?」
「そんなわけないでしょ。部長さんが先野さんを指名したの」
通常ならマネージャーが各探偵の案件状況からサブに入る人員を選ぶのだが、今回は部長が指名とはどういうことやら。
「そいつは名誉なことで」
「忙しいのでしたら、ほかをあたりますが」
「三条さんのサブなら断れないぜ」
三条愛美は先野より一回りほど若いが、いくつもの案件を常に抱えていて、本人は謙遜するが、敏腕探偵候補として将来有望な社員である。
「ありがと。じゃ、明日、よろしくね」
引き受けてくれたことにマネージャーは礼を言って去っていく。
先野はしかし、いまメインで受けている案件もそう簡単ではないし、どうしたものかな、と考えた。
「だが、まぁ、なんとかなるか」
部長がわざわざ指名したのだ。ならばなんとしてでもやり遂げるしかないし、やり遂げる見込みがあるからこそ指名してきたのだろう。
「案外、楽かもしれんな……」
そんなことを思った。楽観的に考える男であった。
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