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それは昨日のことであった。
先野光介のもとに一件の依頼が舞い込んできた。事務所に併設された面談スペースにいたのは、50代とおぼしき疲れた顔の陰気な婦人であった。
興信所を利用しようという人間は、だいたい暗い雰囲気を漂わせていた。当然だろう、悩みがあるから相談に来ているのだから。悲壮感いっぱいで、すがるような気持ちでいる。金銭で解決しようというからには、相当な決心をしたわけで、無理もない。
バッチリ化粧をしているが、心までは隠せない。
そんな依頼者を安心させるのが探偵の仕事なのである。
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