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「どうもお待たせしました」
パーテーションで区切られた面談スペースに入った先野は、口元に微笑をたたえる。本人は依頼者にリラックスしてもらう効果を狙っているが、気持ち悪い印象しか与えなかった。さらに全身真っ白な上下のスーツとソフト帽が、もうなにかのコスプレにしか見えず、こんなところに相談に来てだいじょうぶだろうかという不安をつのらせてしまう。が、もちろん先野はそんなことに気づかない。
「大船に乗ったつもりでお任せください」
そういう大げさな物言いが、逆に胡散臭さを倍増しているのに。
「はい……」
明らかに戸惑っているのが、その「はい……」の一言に表れていた。
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