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晃一はかつてないほど目を見開いた。言葉が出てこない。
怒り混じりの言葉は最高の告白に聞こえた。
確かめるように、ヴィンセントの頬に手を伸ばす。今度は晃一からキスをした。冷たい唇が黙って受け入れる。
「オレは、ヴィンセントが好きだ」
「ああ」
「でも、ヴィンセントの中にはクロードがいて、どうしたって彼には敵わない」
「フン、張り合うつもりか?」
小ばかにしたように笑うので口を尖らせると、額を軽く小突かれた。
「クロードを忘れることはない。そんな必要もない。だが、今この瞬間、そしてこれからも、私の心の中心に在るのはお前だ、コーイチ」
紫の瞳が真摯に見つめてくる。その純粋さに吸い込まれそうで、晃一は陶然となった。
ヴィンセントを抱きしめ、好きだ、と何度も繰り返す。
その言葉しかなくて、その感情が全てで、二人を確かに繋ぐ絆となる。
近くの空に、橙の花がパッと咲き誇った。
二人の唇が自然と重なり合う。
遠くの空では無数の星々が静かに煌めいていた。
「帰るか」
名残惜しそうに唇が離れると、目元をほんのり潤ませたヴィンセントが言った。
「ああ」
頷くなり、再び横抱きにされる。階段を上ったときと同様に飛ぶのかと思いきや、次の瞬間には家の玄関の前にいた。
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