エトワル~夏の夜空に煌めく星は~

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 夏休みも終盤に近づき、晃一は課題の仕上げに取り掛かっていた。 「コーイチ、荷物が届いているぞ」  ヴィンセントが郵便物と一緒に宅配された荷物を持ってきた。晃一の血を吸うようになってから、ヴィンセントは昼間でも外に出るようになった。やはり暑さは苦手なのか、太陽に顔をしかめることはあるが、晃一の買い物に付き合ったり、海辺に散歩に行ったりしている。 「ありがとう」  荷物を受け取って宛名書きを見ると、東郷の名が記されていた。ダンボールで包装された荷物を開けると、二枚のフェルメールが現れた。横山の贋作とガードナー美術館から盗まれた品だ。手紙が同封されており、先日の非礼への詫びを込めて二枚とも贈呈する旨が書かれていた。 「意外と律儀だな、あの男」 「そうだな。でも、オレが欲しかったのは一枚だけで、もう一枚については何にも言っていないのにな」  晃一は撃ち抜かれた絵を見やった。 「コーイチが自分の身を挺してこの絵を庇っただろう。だから、この絵にも何かしらの価値があるのだと踏んだのだ。あの男、お前を気に入ったようだからな」 「まあ、くれると言うならもらうけど。これ、本当にクロードが描いたのか?」     
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