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その日から、都築家の食卓には必ずレバ刺しと赤ワインが並ぶようになった。冷蔵庫の中には新鮮なレバーが常備され、一日一本のペースでワインボトルが空になっていった。
祖父が大切にとっておいた秘蔵の一本も、「今が飲み頃だ」と飲まれてしまった。晃一にはその価値がわからなかったし、祖父の知り合いであるヴィンセントであれば許してくれるだろうとあまり深く考えなかった。
ヴィンセントはすぐに都築家に溶け込んだ。昔からの知り合いのように、晃一もヴィンセントを受け入れた。あまり人付き合いが得意ではない晃一だが、ヴィンセントとの距離感が近すぎも遠すぎもせず、とても自然に居られるからかもしれない。人外の生命体である彼の生態に驚かされてばかりだが、今のところ上手くやっていけていると思っている。
「十七歳だと? 生まれたばかりの赤子ではないか」
夕食時。フォークでレバ刺しを食しながら、ヴィンセントは晃一の年齢を聞いて瞠目した。
「吸血鬼とは時間のスケールが違うんだ。一緒にしないでくれ」
ただでさえ、同級生に比べて童顔なのだ。大きな黒目がちの瞳がさらに幼さを演出している。高校生になって筋肉がつき始めたが、背はようやく百六十を超えたところで、もう少し伸びてほしいというのが本音である。全体的に子どもっぽさが残っているのは仕方ないとしても、赤ん坊はないだろう。
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