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密かなコンプレックスを刺激され、晃一は悔しげに焼いた肉にかぶりついた。
「確かに、我々と人間では時間の感覚が異なるな。我々に寿命という概念はない」
ヴィンセントはワイングラスを傾けながら言った。
「死なないってことか?」
「老いによる死、という意味では死なない。我々にとっての死は、存在の消滅を意味するからだ」
「存在の消滅?」
「灰になるということだ」
「……昼間、起きていて大丈夫なのか?」
吸血鬼は陽光を浴びると灰になってしまうというが、ヴィンセントはふつうに朝起きて夜寝ている。外に出ることはなく、一日中家か店の中にいるが、光を全く浴びていないわけはない。
「そこらの紛いものと一緒にするな。昼より夜のほうが過ごしやすいという程度で、陽光が全く駄目なわけではない」
「十字架やにんにくは? 心臓に杭を刺したらどうなる? 血を吸われたら仲間になるのか?」
晃一はここぞとばかりに尋ねた。ヴィンセントは面倒くさそうに眉根をよせたが、端的に説明してくれた。
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