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「ヴィンセントたちは普段、どういう生活を送っているんだ?」
「別にどうってことはない。人間に紛れて暮らしている」
外見は人間とほとんど変わらないので問題はない。食事面で苦労するそうだが、そこは上手くやり過ごしているらしい。
「同じ種族といっても、群れることはない。だから、組織や社会といった概念がない。まれに子を為し、親子や兄弟と名乗る奴らもいるが、家族という概念がそもそもないに等しい」
「それはずっと独りきりということか?」
「そうだ」
「寂しくないのか? そんな生き方」
永遠にも等しい時間を独りで過ごすなど、想像もつかない。けれど、ヴィンセントたちにしてみれば、それが当たり前で「寂しい」などという感情は持ち合わせていないのかもしれない。
そこへ、晃一の予想とは反して、思いがけない答えが返ってきた。
「だから、我々は人間たちの中に紛れるのかもしれない」
「え?」
「種族同士でコミュニティを形成することはない。そういう発想がないのだ。だが、果てない時間を独りで過ごすには倦んでしまう。それを厭い、大切な栄養源であると同時に、姿かたちが似通った人間に近づいてしまうのだろう」
棚に隠れて、ヴィンセントの表情は見えなかった。
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