エトワル~夏の夜空に煌めく星は~

19/114
前へ
/114ページ
次へ
「ヴィンセントたちは普段、どういう生活を送っているんだ?」 「別にどうってことはない。人間に紛れて暮らしている」  外見は人間とほとんど変わらないので問題はない。食事面で苦労するそうだが、そこは上手くやり過ごしているらしい。 「同じ種族といっても、群れることはない。だから、組織や社会といった概念がない。まれに子を為し、親子や兄弟と名乗る奴らもいるが、家族という概念がそもそもないに等しい」 「それはずっと独りきりということか?」 「そうだ」 「寂しくないのか? そんな生き方」  永遠にも等しい時間を独りで過ごすなど、想像もつかない。けれど、ヴィンセントたちにしてみれば、それが当たり前で「寂しい」などという感情は持ち合わせていないのかもしれない。  そこへ、晃一の予想とは反して、思いがけない答えが返ってきた。 「だから、我々は人間たちの中に紛れるのかもしれない」 「え?」 「種族同士でコミュニティを形成することはない。そういう発想がないのだ。だが、果てない時間を独りで過ごすには倦んでしまう。それを厭い、大切な栄養源であると同時に、姿かたちが似通った人間に近づいてしまうのだろう」  棚に隠れて、ヴィンセントの表情は見えなかった。     
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加