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「ヴィンセント、血が欲しくなったらいつでも言ってくれ。オレの血をあげるから」
「突然何を言い出すのだ」
ヴィンセントの手からフォークが滑り落ちそうになった。
「昨夜話しただろう。私は」
「わかっている。でも、それじゃあヴィンセントの体が持たないじゃないか」
レバ刺しと赤ワインだけでいつまで生きていられるか、わかったものではない。晃一には、ヴィンセントがクロードの後を追いたがっているようにさえ感じられ、嫌でたまらなかった。
ヴィンセントが好きで、だから嫉妬するのだと、昨晩ようやく気が付いた。
ヴィンセントにどうしようもなく魅かれるのも、もやもやと苦い感情を抱くのも、ひとえに彼に恋をしているからだ。
ヴィンセントは晃一の言葉をどう受け取ったのか、小さく笑った。
「自らエサになると言っているようなものだぞ。お人好しも度が過ぎると命取りだな」
晃一が格別優しいわけでもお人好しなわけでもない。ヴィンセントが好きなだけだ。
けれど、それを告げる勇気はまだ足りなかった。
「オレはただ……ヴィンセントに生きていてほしいだけだ」
そう言うのが精一杯で、赤くなった顔を隠すように下を向いて味噌汁をすすった。
ヴィンセントは一言、「覚えておく」とだけ言った。
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