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ヴィンセントが語ったクロード・ダヴィッドの人物像は、「才能がありつつも世間に認められる前に夭折した画家」で、「バカがつくほど純粋に絵を描くことを愛した青年」だったらしい。
「だから早死にしたんだ」
ヴィンセントはこともなげに言った。
十九世紀末、フランス・パリ。ヴィンセントは一介の画商として、無名の若き画家クロード・ダヴィッドと出会った。
それ以前より、ヴィンセントは商人に扮してヨーロッパを中心に放浪していたという。十五世紀、フィレンツェを支配したメディチ家に出入りしていたこともあれば、自分で絵を描く一方で画商でもあったフェルメールとも親交があったらしい。
ヴィンセントは描きあがったばかりの『手紙を書く女と召使い』をその目で見ていた。滅多に作品を賞賛しない彼が、「美しい」と感嘆した数少ない絵画の一つである。
「クロードはいい画家だった。けれど、当時は荒削りで未熟だった。長生きしていれば世間の名だたる巨匠と肩を並べるくらいには大成したかもしれんな」
寄せては返す波の音が、ヴィンセントの穏やかな口調と相まって優しく聞こえた。
「当時、私は一種の倦怠に悩まされていた。存在することに疲れていたのだ。老いることもなく死ぬこともない、無限ともいえる時間を漂うしかない己の身が呪わしく思えた」
しかし、本能には忠実で、人の血を欲すれば男女問わず吸血した。
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