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今この瞬間さえ、一時でもヴィンセントの心を慰めたくて、かける言葉を必死で探していた。
「……クロードは、ヴィンセントに会えて幸せだったと思う」
上手く伝わるか不安になりながら、慎重に口を開く。
「あの絵には、クロードの想いがたくさん込められている。今思うと、オレはそれを感じたから、小さい頃に慰められたんだ。あの絵から……強い愛情を感じたから。そんな絵を描いた人間は幸せだったに決まっている」
晃一は真っ直ぐな瞳をヴィンセントに向けた。
確信を持って言えることを、力強く断言する。
「知っているさ」
ヴィンセントはフンと鼻で笑った。
「最期まで笑っていたからな、あいつは。だが、そう言ってくれる人間がいるとは思わなかった」
そう言って、ぐしゃぐしゃと晃一の頭を撫で回した。
「あいつも独りだったから……お前はいい奴だ」
本当に嬉しそうに、ヴィンセントは微笑した。
その心の在り処がクロードにあると知っているからこそ、胸の痛みが増した。
どう足掻いても、クロードには敵わない。
けれど、どうしても振り向いて欲しい。
はちきれそうな想いが一気に膨張し、晃一は何も考えられなくなった。
ヴィンセントの形のよい唇に、ぶつけるように唇を重ね、しばらくして我に返った。
「あ…………わ、悪いっ」
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