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「あんただって、画廊のオーナーならそれなりの鑑定眼持っているんだろう。見分けがつかないのか?」
晃一はどうしてもこの男に祖父を会わせたくなかった。画商だろうがヤクザだろうが、東郷清輝という男は胡散臭くて仕方ない。祖父を厄介ごとに巻き込みたくなかった。
「言うじゃねえか、坊主」
東郷の顔から笑みが消えた。
「人が下手に出りゃあ、図に乗りやがって」
途端に柄が悪くなった東郷に、やっぱりあんたもヤクザじゃないかと思った。ならば尚のこと、後に引くわけにはいかない。
「じいさんに、あんたの仕事は回さない」
「ガキがッ!」
痩せぎすが晃一に殴りかかった。
まずい、と思った瞬間、カウンター内にいたヴィンセントがいつの間にか目の前に立ちはだかり、男の手首を掴んでいた。そのままギリギリと捻り上げる。
「離せ、コノヤロー!」
痩せぎすは喚いたが、ヴィンセントは容赦なかった。痩せぎすの足が宙に浮くほど、腕一本で吊り上げていた。
「誰の、何の絵だ?」
ヴィンセントは東郷に向かって尋ねた。
「ヤイチに代わり、私が鑑定してやる」
「ヴィンセント!」
「へぇ……兄さんも同業者かい?」
「似たようなものだ」
東郷は疑わしげにヴィンセントを見た。
「私はヤイチと古い付き合いだ。ゲティから来たと言えば、その意味がわかるか?」
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