エトワル~夏の夜空に煌めく星は~

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 晃一は破片を茶碗が入っていた箱に入れ、紐で結んだ。 「明日、冬治さんのところに行って修理頼んでくる」 「ああ」  その箱をカウンターに置き、放り出したままになっていた買い物袋を手に取った。 「……レバ刺し、ダメになったかも」  父と母に供える花もくたりと萎れかけている。早く水に挿してやろう。レバ刺しも、もう一度買いに行ったほうがいいかもしれない。  思考は巡るのに、体は動かなかった。 「コーイチ」  ヴィンセントが晃一の手からそっとビニール袋を取り上げ、東郷に平手打ちされた頬を撫でた。 「先にこっちを冷やせ」  ヴィンセントの手は氷かと思うほど冷たかった。じわりと膿んだ熱が発散されていくようで、知らずのうちに安堵の息が漏れた。怒りや忸怩たる感情は治まり、心は落ち着きを取り戻した。 「ヴィンセント、もう大丈夫だ」 「そうか。だが、まだ赤いぞ。あの男、手加減しなかったからな」 「湿布貼っておくさ。ありがとう」  ヴィンセントの手の感触を名残惜しく思いながら、晃一は礼を言った。もうしばらくこのままでいたいと思ったが、ずるずると甘えてしまいそうでやめた。 「しかし、あそこまでするとは正直思わなかった」     
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