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塩を適量かけてやり、スイカを一切れ渡した。ヴィンセントは黙って受け取り、シャリ、と一口食べた。
「どうだ?」
「…………人間の味覚はよくわからん」
血が主食のヴィンセントにはわからない味なのだろう。晃一が血を美味いとは思わないように。
それでも、ヴィンセントはぺろりと平らげ、二切れ目に手を伸ばした。
「無理しなくても」
「無理などではない。ただ、私もお前と同じに思ったのだ」
「何のことだ?」
「コーイチがヤイチのモノを大切に思うように、コーイチが美味いと感じるモノを私も感じてみたいと思った。それだけのことだ」
何のてらいもなくさらりと言われ、晃一のほうが赤くなってしまった。
ヴィンセントが自分に興味を持ってくれている。そう考えただけで、心拍数が倍速になり、顔の筋肉が緩みそうになった。
晃一は慌ててスイカに齧りついた。きっと、今の自分は面白いほど赤面していて、情けない顔になっているに違いない。
そんな晃一をよそに、ヴィンセントは可もなく不可もないといった表情でスイカを食べ続けていた。
「そういえば、さっき言っていたゲティって何のことだ?」
平常心に戻ろうと、晃一は話題を変えた。
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