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ややあって、ヴィンセントが口を開いた。
「私もコーイチを気に入っている」
「え……?」
思わずヴィンセントの顔を凝視する。ヴィンセントは屈託なく言った。
「どうやら私は、お前やヤイチのような真っ直ぐな人間を好むようだ。一緒にいて、心地がよい」
それはそれで嬉しい賛辞だったが。欲しい答えではなかった。
「ヴィンセント、オレは」
「ヤイチも良い孫を持ったな」
絶妙なタイミングで遮られた。
その先は言うな、と暗に制されたようで口が動かなくなった。
気持ちを伝えることすら、叶わないのだろうか。
クロード以外の血は飲まないと固く誓ったヴィンセントと想いが通じ合うとは思ってもいない。けれど、何も言わないうちからこの恋心を否定されるのは哀しい。
報われなくていい。
ただ、知っていてほしい。
ヴィンセントが好きだというこの心を。
「オレは……じいさんと同じくらい、ヴィンセントを大切に想っている」
慎重に言葉を織り交ぜて、少しでも届けばいいと気持ちを伝える。
「それは光栄だな」
ヴィンセントは美しく微笑んだ。本当に嬉しそうで、違うのだと叫びたい衝動を必死で堪えた。
大切なのは本当だ。そこには、一人の男としてヴィンセントを想う一途な恋情が秘められている。
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