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白い肌に赤い血が滴る。一滴も零さまいと夢中で啜る様は、異様であるにもかかわらず扇情的で、晃一は目を逸らすことができなかった。
男はひとしきり吸うと、ぐらりと体を傾けた。そのまま晃一の上に倒れこむ。慌てて支えると、男は気を失っていた。
「……どうしろって?」
途方に暮れてしまったが、このままにしておくわけにはいかない。
晃一は自分より上背のある男を引きずり、居間に運んだ。押入れから布団を引っ張り出し、その上に寝かせる。そして、見るからに暑苦しいマントを脱がせた。マントの下からは、ハイネックのフレアロングジャケットにフリルをあしらった白のブラウスが現れた。咽喉元を緩めようと、リボンタイをほどき、ボタンを外す。
わずかに覗いた鎖骨に思わずドキリとしてしまい、晃一は動揺した。
同性に見惚れるなど、どうかしている。
けれど、否応にも惹きつけられてしまうのだ。
この男の人智を超えた美しさに。
自分を落ち着かせようと、男の傍らにある扇風機の電源を入れた。生ぬるい空気をかき回し、勢いのある風が火照った頬を涼ませる。
そこでふと、腕の傷は大丈夫だろうかと気になった。男が自分で傷つけたのだ。理由はともあれ、手当てをしたほうがよいだろう。
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