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晃一は頷き、一つ深呼吸した。そして再び二枚の絵と向き合った。
絵を通して、画家の魂を感じる。
それはフェルメールかもしれないし、横山かもしれない。はたまた、別の人間かもしれない。
晃一は一枚ずつ丹念に見た。
黒田、東郷、ヴィンセントの三人が息をのんで晃一を見守っている。
ややあって、「決まった」と告げた。
「どっちだ? どっちを選ぶ!」
東郷が急かした。
「オレは、こっちをもらう」
晃一は右の絵を指さした。
「何故、そちらを選んだ?」
黒田が尋ねた。
「違和感があったから」
以前、横山の描いたフェルメールを見たときと同じ感覚を覚えた。あのときは何かが足りないと感じた。
今、あえて言葉にするとすれば、画家の魂が足りないのだと晃一は思う。贋作を真作と偽る以上、生半可な作品にはできないという気迫とプライドが見え隠れする。しかし、それも贋作の域を出ず、画家としての魂を感じることはなかった。
晃一の一言をどう受け取ったのか、黒田は難しい表情を浮かべた。
「君はどう見るかね?」
ヴィンセントに話を振る。より正確な鑑定ができるのは、この中ではヴィンセントだけである。ヴィンセントは絵に近づいた。
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