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ヴィンセントが遮った。手術室に入り、台に寝かされている晃一に口付けする。何かを飲ませたようだった。そして、そのまま晃一の体を抱き上げた。
「おい、君!」
医者が制止するのも聞かず、ヴィンセントは東郷に視線を寄こした。
「いいか。先ほど忠告したこと、決して忘れるな。そのときは二度と容赦しない」
それだけ言い残し、二人は消えた。
東郷と医者には一体何が起きたかわからなかった。
文字通り、忽然と、ヴィンセントと晃一の姿が煙のように消えていなくなってしまったのである。
「何者だ、あいつら」
「オレに聞くな」と東郷。
「だが、あいつらのことは他言無用で頼む」
「誰も信じやしないさ。いきなり目の前でドロンと消えちまうなんて」
二人はしばらく呆けたまま、その場に立ち尽くしていた。
目を開けると、見慣れた我が家の天井が飛び込んできた。晃一は自分の部屋に寝かされていた。
黒田に撃たれ、病院に担ぎ込まれたところまでは覚えている。どうやら何とか家に帰ることができたらしい。
首を動かすと、右肩には包帯が巻かれていた。痛みを感じないのは薬が効いているためだろう。
全くひどい目に遭った。
そう思いながら顔を動かして、ぎょっとした。反対側にヴィンセントが寝ていたのである。それも、晃一を抱きしめる形で。
「ヴィ、ヴィンセント……?」
うっすらと、目が開いた。
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