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昂る気持ちを抑えつけ、腕をさらに近づける。ヴィンセントは宝物に触れるかのように晃一の腕に触れた。
傷口に唇を寄せ、恐る恐る舐める。
久しぶりに味わう人間の生き血は、熱く、甘く、ヴィンセントの全身に染み渡っていった。
ヴィンセントは熱心に血を吸った。その姿がひどく艶かしく、扇情的で、綺麗だと思った。
初めて会ったときから、ヴィンセントは美しかった。今こうして、自分の血を求め、生きようとする様はなお輝いて見えた。
それがたとえヴィンセントの意にそぐわない方法だったとしても、生き続けてほしい。
願わくば、その隣に自分がいることを許してほしい。
求めてばかりで、恋も傲慢だ。
晃一は、自分の血を通して少しでもこの気持ちが伝わればいいと密かに願った。
「はい、出来上がり。お兄さん、背が高いから丈足りないけど、まあそれもご愛敬ね」
日曜日の夕方。肉屋のおばさんが二人分の浴衣を持ってやって来た。晃一の肩の傷跡に仰天していたが、「ただのかすり傷です」と答えた。
ヴィンセントの血のおかげか、傷口は見事にふさがっていた。けれど、案の定血の効力は充分ではなく、痛みや熱が出た。だがそれも、昨日一日安静にしていたら何事もなかったように元気を取り戻した。
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