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「ああ、すまない。そういう意味とは思わなかった」
恋愛対象にすらならないと言われているようで、何とも虚しくなった。
どうしたらヴィンセントの心の内に入れるのだろう。クロードのように、とは言わないが、少しでもヴィンセントに近づきたい。
花火の音が遠くに聞こえる。
「コーイチ」
ヴィンセントは優しく呼び、晃一の顎に指をかけた。ゆっくりと持ち上げられ、薄い唇を重ねられる。
何が起きたのか、一瞬わからなかった。
「キスにはキスを、だ」
「何でっ……!」
怒りに似た感情が腹の底から湧き上がり、爆発した。
「どうしてキスなんかするんだっ! 受け入れるつもりないくせに!」
「わかっていないのだな、お前は」
深いため息は何故か怒りが滲んでいた。
「何故私がお前の血を吸ったのか、その意味を考えなかったのか?」
「え……だって、あれはオレが無理やり飲ませたんじゃないか。だから、吸うしかなかったんだろう?」
「それはただのきっかけに過ぎない。私が求めたのだ。自らの誓いを捨てて、お前の血を吸いたいと」
「……どうしてだ? あれほどクロード以外の血は飲みたくないって」
「察しろ! 私もお前と同様、お前の傍らにいたいと望んだからだ!」
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