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エトワル~夏の夜空に煌めく星は~
「……暑い」
容赦ない真夏の暑さに、都築晃一は思わずひとり言を漏らした。開け放った窓からは一陣の風もなく、年季が入った扇風機だけでは慰め程度にしかならない。
冷房設備が一切ない店内を恨めしく思い、晃一は店のカウンターから立ち上がった。客は誰一人としていない。しばらく席を外しても全く問題ないだろう。
晃一は空になったコップを手に、奥にある台所に向かった。店と居住スペースが一続きになっているため、何かと便利である。
冷蔵庫から麦茶を取り出し、なみなみと注ぐ。一気に呷ると、わずかに涼んだ心地になった。
祖父が帰ってきたら、絶対にクーラーを入れてもらおう。バイト代が入ったので、それを充ててもいい。
そう考え、再び麦茶を注ぐ。
問題は、祖父がいつ帰ってくるかだった。
晃一は祖父の弥一と二人暮らしである。両親は五歳のときに事故で他界した。それ以来、祖父の趣味が高じて開業された骨董店『光月堂』が晃一の家となった。
祖父は無類の骨董愛好家である。若い頃から世界を巡り回っては、絵やら彫刻やらを集めていた。挙句、自分で店を開き、七十五歳になった今も孫に店を任せて一人で海外に行くくらいなのだから、筋金入りだ。
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