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キライ、キライ、スキ!
いまでも思い出す、あのときの緊張感。
学校で渡すつもりだったチョコレート。
中学一年生のとき。
入学の日に教室に来てた先輩。
三年生は、一年生の案内をするのがお決まりで、玄関から教室まで案内する人とか、教室で席を案内してくれる人とかいた。
先輩は教卓の横に座って、なんにもしてなかった。
隣の女の先輩がかいがいしくいろいろしてたけど、先輩は座ったまんまなにも言わず、怒ってる感じでもなくて、ただボーッとどこかを見てた。
それが妙に威圧感があって、みんな、おしゃべりもせずに大人しく席に着いていた。
でも、カッコ良かったんだよね。
なりたての中学一年生にとって、三年生ってスッゴイ大人に見えた。
大人じゃないのに、大人な感じで、近寄りがたくって、話しかけにくくって、変なの。
先輩はカッコよくって、ただただカッコよくって。
後で聞いたんだけど、実は先輩はジャンケンには勝ってたのに、案内係をするはずだった同級生が当日急に風邪で休んじゃって、しょうがなく教室に来てくれたんだって。
後ろの席の女子二人がコッソリ話し始めたのが聞こえた。
「あの前の人、カッコイイね。」
「うん、桜木先輩。」
「知り合い?」
「お兄ちゃんの友だち。」
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