16人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ところが、男の霊はゆっくりと頷いた。
刹那はこのイベント名が『第9回 ネトラジアニメ バレンタインプロジェクト』だったのを思い出した。今回は不参加だが過去に出演していたのかもしれない。そうするとこの霊は常にここにいるのではなく、バレンタインのこのイベントの時だけ現れているのではないか。
「沙絢さんからバレンタインのチョコが欲しいの?」
彼は再び時間をかけてゆっくりと頷く。
「そう‥‥」
望みが叶えば成仏出来るのかもしれない。もっとも、成仏といってもこの場所に存在しなくなるだけなので、天国へ行くのか、単なる消滅かは刹那にも判らない。ハッキリしているのは、このままで居ることが当人にとっても辛いという事だけだ。
「せっちゃん、どうしたの?」
帰り支度を終え、大きな紙袋を下げた優風が声をかけて来た。彼女は前半だけの出演だ。
「また、何か視えてるの?」
アフレコ初日で副業をしたので、彼女は刹那の能力を知っている。
「はい、実は‥‥」
刹那は簡単に目の前に居る霊について説明した。
「そっか‥‥このイベントの初回に沙絢さん出演してたよ」
「他には?」
「たぶん、それだけだと思う。あたし、結構このイベント出てるけど、沙絢さんと一緒だったのは初回だけ」
最初のコメントを投稿しよう!