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友達バレンタイン
2月14日。それはハンター(女子)にとって大きなチャンスであり、このチャンスを使って奇襲を仕掛ける輩も多いのではないか。彼女もその一人である。
「田中くん!」
放課後、夕暮れが赤く照らす坂道で田中は声に振り向いた。呼んだ主には見覚えがあった。ふわっとしたショートボブで、背が小さく、ぱっちりとした目が印象的だ。
「ああ、文化祭実行委員のときの。ええっと…?」
「佐藤です、佐藤華です。あの……」
首をひねっていると、はっきりとした高めの声で答えてくれた。華は手提げかばんを少し開け、何か英語の書かれた小さな小包を取り出した。
「これ、あの、チョコです!えっと、受け取ってください!!」
勢いよく腰を曲げ、小包を田中に向けた。文化祭実行委員に配っているのだろうと思いながら、田中はうっ、と奇妙な声を上げて一歩後ろに下がる。
「あー、あのごめん、気持ちは嬉しいんだけど、ほんと大嫌いで無理なんだわ…。あ、よかったら……」
チョコ好きの哲也に渡してくれないか? と言おうとして、彼女が頬が濡れていることに気が付いた。
「え? え? ちょっ!? ええー」
声をかける間もなく彼女は猛ダッシュで坂を下っていった。
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