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本日は神聖なバレンタインデー。私も大好きな彼に渡そうと一生懸命作った焼きチョコを持って教室前にいた。
「あら?あなたそれ……」
金髪縦ロールのいかにもなお嬢様が私が持ってる箱を指差す。
私が口を開く前に箱を取り上げ、ラッピングをビリビリと破って開ける。
「何するの!?」
親友が頑張ったラッピングを破くなんて、上品な女の子がする様な事じゃない。
バチンッ
私は上品な女の子から思いっきりビンタを食らった。
「なんなのこれ!?なんていう物体か言ってみなさいよ!」
上品な女の子、千里がものすごい迫力で怒鳴る。
「焼きチョコです……」
「はぁ、まったく……頭が痛いわ」
千里は頭を抱えてため息をつくと、指パッチンをした。
千里の後ろに執事が現れ、彼女に小箱を渡した。千里は私の目の前で小箱を開ける。中には香ばしい香りの焼きチョコが入ってる。
「いい?これが焼きチョコ。で、あなたが作ったのは焼き炭っていうのよ、優香」
ようやく主人公である私の名前が読者に知れ渡った、罵倒付きで。
「で、でも頑張ったもん。チョコ焼いたもん」
「じゃあこれを食べてみなさい」
千里は私の口に焼きチョコを押し込む。
「感想をどうぞ」
「ほろ苦くて甘くて美味しいです。流石お嬢様が用意したチョコですわ」
「えぇ、すぐそこでね」
千里は窓から見えるコンビニを指差す。
「じゃああの箱に」
「仕掛はないわ。それよりはい、あなたが作った焼きチョコ」
千里は再び私の口に焼きチョコを押し込む。
「むがぁっ!!!」
苦い!私は全神経を舌に集中させる。ほんの僅かだけど甘みを感じる。
「……感想をどうぞ」
千里は哀れんだ目で私を見ながら言う。
「ベリーベリービターな大人なお味が、あだぁ!?」
どこから取り出したのか、千里の手にはハリセンが握られている。
「某リアクション芸人みたいな事言わないの!はぁ、まったく……。こんなのを好きな人に渡そうと考えるなんて考えられないわ。ていうか料理全般出来ないくせに焼きチョコなんて難易度ハードなもの作ろうとしてるんじゃないわよ!」
千里お嬢様はそう言って私をハリセンでひっぱたく。
心身共に痛いです……。
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