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「────大丈夫やっ。なんも───」
大好きなこたつにもぐっていると、いつの間にか眠っていたらしい。
となりに座る彼女の声で目が覚めた。
視線だけ動かして辺りを見わたすが、この部屋にはボクと彼女だけ……。
どうやら彼女はだれかと電話しているようだ。
彼女の電話に耳をかたむけながら、窓の外を眺めようとしたら窓はまっしろになっている。
いや、ちがう。
目をこらすと、大きなボタン雪がゆっくりと一つ、また一つと窓ガラスや地面、庭の草木にまっしろな花を咲かせているようだ。
咲いては消え、また咲いて。
ときおり、花が重なり消えないのがあるようだ……。
あの日と同じ雪。
あの日と違うのは…………
「……せやから、ウチのことはなんも心配せんでええから、
…………うん、おおきにな。ほな……」
コトッ。
彼女が受話器をこたつの机の上に置いた音でボクは現実に戻された。
「お父ちゃんもお母ちゃんもおらん、子供らも……せっかく念願の一人暮らしなんや、わたしは気楽でええねん」
彼女が何やらぶつぶつ言いながら、机の上に置かれたバスケットの中からみかんを一つ取るのを、ボクはだまってジッと見つめる。
「あ、せや、まだアンタがおったな」
ボクの視線に気付いたのか、彼女が笑う。
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