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「ほーらー、明史くん、競争だー!」
「朝から元気だなあ雪は」
今日も元気に夢野明史くんと一緒に登校です。
元気な私の名前は姫美重雪翔。変わった名前ってよく言われちゃう。
明史くんは幼なじみで、幼稚園から一緒に登校する仲良しさん。なんと家もお隣さん!
幼稚園はバスで小学校は通学団だから同じ時間に登校するのが当たり前だったんだけど、中学校に入って通学団とかがなくなっても一緒に登校してる。
気持ちのいい朝の登校がなんとなく好き。昨日まで春休みだったけど、明史くんとは部活が同じなのでやっぱり一緒に登校してた。
それでも新学期が始まるこの朝はなんだかちょっと特別な感じ。
明史くんは朝が弱いみたいで、いつもぽへ~っとした顔を眺めるのもお約束。
今日は始業式。私は中学校三年生になりました。
「ぴかぴかの制服着てる人が新入生かな!?」
「雪は朝からなんでそんなに元気なんだ……」
明史くんちょっと疲れてるみたい。まだ朝始まったばかりだよ?
明史くんは私より身長がちょっぴり大きい。私は女の子の中では普通くらいだけど、明史くんは男の子の中ではそんなに大きくないほうみたい。あんまり大きいとおしゃべりしづらくなりそうだから、今くらいでちょうどいいと思う。
実は明史くん、だれかからかラブレターをもらったことがある! しかもげた箱にだよ! すごくどきどきしちゃった。
でもお断りしちゃったんだって。全然しゃべったことない人からだったって言ってたけど……本当によかったのかな?
私たちは玄関ポーチをくぐってげた箱でスリッパに履き替え。私たちの学年は青色。
今日は始業式だからスリッパはげた箱から出すんじゃなくて、いったんおうちに持って帰ったもの。だからかばんから登場。
「あっ」
ざら板でちょっとよろけちゃって、右スリッパが明史くんの方に転がってっちゃった。
「……やっぱり入らないな」
「ちょっと明史くんっ、返しなさい」
明史くんは私の右スリッパを試し履きした後、くすくす笑いながら私に……あれ、持ったまま私の右足の前に。
(履きなさいっていうことなのかな?)
私は差し出されたスリッパに右足を通しました。女王様……?
「三年生も、よろしくな」
このタイミングで?
「うん。よろしくお願いします!」
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