それぞれの思惑…

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将軍の御舎弟一行が岐阜に着いて二日目の昼に、信長が帰還したと聞いた。 各々が色々と考えながら信長の挨拶を待つ… しかし…信長は現れない… 業を煮やした足利義昭は義昭を世話する者に問い質す。 「余が来ておるのに!挨拶がないとはどう言う了見じゃ!」 その者は這いつくばるように土下座をし義昭に平伏しながら言う。 「何ゆえ…当家の主は田舎者故、只今高貴なる御舎弟様を喜ばそうと接待の段取りに走り回っておりますれば…平に御容赦を!」 「そうか!余のような高貴なる者を迎えるのは初めての事であろうの!主君自らが、走り回って歓迎の仕度をするなど…実に健気じゃ!そうか!歓迎の仕度をの…」 義昭はその者の言を額面通りに受け取り御満悦顔である。 細川藤孝は婉曲に「いきなり訪れておいて…直ぐに会えると思うなよ」と言われている気がしてならなかった。 「そこの者、織田殿に御伝えあれ…わざわざの御接待の仕度痛み入り申す、ですが、出来ましたら一度面会を賜りたいと…」 「拙者、この度我が主、織田信長より将軍の御舎弟様の接待役を仰せつかりました木下藤吉郎と申す者でござる!細川様の御言葉主にお伝え申しまする」 「木下殿、よしなに頼みます」 「ははっ!」
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