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藤工と言えば、建築から指物や漆器、武具に至るまでの木工品総てを網羅する組織であり、京の都にまでその名は知られている職人の組織である。
無論、藤工の名を光秀は知っていた。
藤工の手掛けた茶室などは豪商や大名、公家に至るまで憧れの建築物なのである。
「失礼致します。準備が整いましてござる」
龍興が知らせに来たので匠は腰を上げる。
「明智殿、行こう!」
「拙者もでござるか?」
「明智殿には茶主を勤めて貰いたいが?」
「畏まりました…」
匠とともに茶室に向かう光秀、これでも茶事には詳しいと自負している。伊達に足利義昭に数年仕えていた訳ではないのだ!
茶室に入り腰をおろす匠…
光秀は中を観るなり…動けずにいた…
「なっ…」
「明智殿、取り敢えず座るが良い…」
「失礼しました…」
光秀は衝撃を受けた…
見事…いや…どう表現したら良い物か…
柱一本…障子紙一枚までもが美しく…それでいて全体が融合して一つの世界を作っている…だが一つ一つが協調性はなく…意味が分からない…
強い主張が在るわけでもないのに…注目するとその一つ一つが輝いて見える…
正に「混沌」たる空間と言えよう…
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